「環境ホルモン」は「内分泌攪乱化学物質」と呼ばれます。この化学物質の野生生物に与える脅威が1997年あたりからずいぶん話題になりました。生体の中に侵入し、ホルモンのふりをしてホルモンのバランスを崩し、生殖機能障害や成長、免疫系に深刻な異常をもたらすものです。

欧米ではすでに日本で騒がれる2年くらい前から「環境エストロゲン」という名で呼ばれていました。

もともとエストロゲンは女性ホルモンであり、ダイオキシンをはじめとする環境ホルモンは、これに似たエストロゲン様の化学物質です。女性ホルモンは家畜を太らせる働きを持ちます。家畜の飼料の中にこの女性ホルモンと同じ人工のエストロゲンを混ぜて牛に食べさせると、乳の出がよくなるというので、世界中でさかんに利用された時期がありました。その結果、大量のエストロゲン様物質で乳製品が汚染されることになったのです。

環境ホルモンの生物界への影響はとっくに始まっていました。1950年代から60年代あたりからです。

アメリカにおけるミンク、ハクトウワシの不妊、カナダのカモメのヒナの大量死と奇形など。

とくに顕著なのは、80年代にフロリダのワニの孵化率が通常の90%から18%に激減しただけでなく、赤ん坊の半分は生後10日で死に、残ったワニもオスのペニスが退縮し生殖能力を失っていました。

日本でもイボニシという巻き貝のメスにオスのようなペニスが発見され、これが産卵を不可能にするインポセックスが認められていますが、これらの例はすべて環境ホルモンとの関係が指摘されています。

また、男性の精子の数が激減しており、人類絶滅の危険性があると専門家の間でも心配されています。

人工受精の草分けである元慶応大学医学部教授飯塚理八氏の不妊専門クリニックに相談に来る男性のうち、無精子症(25%)を含む60%が数の少ない精子欠乏症だそうdです。正常値は1ミリリットル中1億個で、これが4000万個をきると不任率が50%になりますが、現在日本の若い成人男子の場合には5000万個から6000万個というラインに落ちてきているそうです。

1992年に50年間で人類の男性の精子が半減していること(1ミリリットル中1億1300万個から6600万個へ)を発表したデンマーク国立大学病院のニールス・スカッケベック教授をリーダーとして、アメリカ、フランス、日本など7カ国からなる共同研究班も、1996年に発足しました。(詳しくはアエラ新年号および1998年2月1日の朝日新聞の社説参照)

PCB、DDT、ダイオキシンなどのほか、環境ホルモンに相当する疑いのあるものは、全部で70種類くらいあるといいます。アメリカの海洋生物学者レイチェル・カーソンが化学物質の生態系に与える危険な影響を40年前に発表して以来、これらのDDTやPCBの製造は大部分の先進国で禁止になっています。

また、厚生省が94年から3年かけた調査によると、母乳のダイオキシン摂取量は赤ちゃんが1日に母乳を約130cc飲んだとして、平均72.1ピコグラム(1ピコグラムは1兆分の1グラム)となり、耐容量の7倍もの高い数値を示しました。これは世界一だそうです。食品でいちばん多く含まれる魚介類で1~2ピコグラムですから母乳ほど高濃度の食品はないことになります。100万トンの水に1ccの物質を入れただけの濃度で効いてしまうというのだからすごいことです。

環境ホルモンによる生物の生殖機能の異常と、ダイオキシンによる発ガン、奇形、精子減少など人体にもたらす異常は、どちらも今までの環境汚染のようなレベルにとどまるものではなく、そう遠くはないであろう将来に生物の絶滅、人類の絶滅という、地球上のあらゆる種自体の終わりを告げる兆しであるかのようにも見えます。

環境エストロゲンという言葉が世界で注目を浴びるきっかけとなり、日本でも翻訳出版された「奪われし未来』(翔遊社刊)という本の帯にも、「人類はもう子孫を残せない」とあります。ここまでが一般教養としての情報です。

今後、人間が自らつくり出した化学物質によって、自分を滅ぼすというシナリオを書き換え、淘汰の法則ではなく、進化の法則にのっとって、自らの愚行を反省できれば、意識そのものと文明の飛躍的な進化へのターニング・ポイントになりうるでしょう。

そのためには1日も早くダイオキシンの最大の発生源を根絶させなくてはなりません。アメリカ政府は早々にも合成化学物質の中で人体に有害な「環境ホルモン」はどれかということを特定するための調査を行なう準備を始めているそうです。その種類は8万種類にものぼるといわれるすごいものです。それだけわかっていないことが多いということです。


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